Issue

「聴いてもらえない」がつくる社会

私たちが向き合っているのは、話す人が足りない社会ではなく、聴く人が足りない社会です。

当協会が「聴く技術」の体系化に取り組む理由を、社会の側から説明します。

Loneliness

孤独とは、話す相手がいないことではない

孤独を「人と会っていない状態」だと考えると、対策を見誤ります。職場に毎日通い、家族と暮らし、SNSで誰かとつながっていても、孤独感を訴える人は少なくありません。

内閣府が継続して実施している「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」では、孤独感を覚えることがあると答えた人が約4割にのぼります。人と接する機会の多い少ないだけでは説明のつかない数字です。

足りていないのは接触の量ではなく、受け止められた経験の質です。話しはじめたら遮られる。評価される。まだ話し終えていないのに解決策を返される。そうした応答が重なると、人は「この話はしても仕方がない」と学習していきます。

孤独は、話す相手がいないことではなく、話しても届かなかった経験の蓄積として生まれます。だから、人を集めるだけでは解けません。聴き方が変わらなければ、同じことが繰り返されます。

聴く姿勢の3つの原則を表した柔らかなイラスト
Workplace

対話の場は増えたのに、聴かれていない

厚生労働省の雇用動向調査では、「職場の人間関係が好ましくなかった」が離職理由の上位に毎年入り続けています。人が職場を去る理由は、給与や業務量だけではありません。

この10年で、1on1、定期面談、フィードバック面談と、対話の「場」は確実に増えました。しかし、場があることと、その場で聴かれることは別のことです。

聴く側が訓練を受けていなければ、1on1は上司が話す時間になります。面談は評価を伝達する場になります。「何でも言ってほしい」と言われても、過去に遮られた経験があれば、人は本題を話しません。

心理的安全性という言葉が広く知られるようになりました。ただ、それは制度をつくれば与えられるものではありません。「この人に話しても大丈夫だ」という判断は、一回ごとの会話の中で積み上がっていきます。その一回を成立させるのが、聴く技術です。

Home and School

聴かれなかった人が、聴けない人になる

子どもが学校であったことを話しはじめたとき、大人はつい「それで、あなたはどうしたの」と確認したくなります。心配しているからこそ、事実を把握したくなり、助言したくなる。悪意はどこにもありません。

けれども、話を最後まで聴かれた経験の乏しい子どもは、自分の感情を言葉にする力を育てにくくなります。何をどう感じているのかを自分でも掴めないまま、大人になっていく。

そして、自分の感情に名前をつけられない人は、他人の感情にも名前をつけられません。聴かれなかった人が、次の世代を聴けない人になる。この連鎖は、家庭でも、学校でも、職場でも起きています。

連鎖を断つには、どこかで大人の側が聴き方を学び直す必要があります。それは自然に身につくものではなく、意識的に学ぶしかないものです。

Why a Skill

なぜ「才能」ではなく「技術」と呼ぶのか

聴くことは、性格の優しさや相性の問題として語られがちです。「あの人はもともと聞き上手だから」で話が終わってしまう。

しかし臨床心理学の分野では、聴くことは半世紀以上にわたって、訓練可能な専門技術として研究され、教育されてきました。カール・ロジャーズが示した来談者中心療法(パーソンセンタードアプローチ)は、その中心にある考え方です。

才能だと考えれば、持っていない人は諦めるしかありません。技術だと考えれば、学び、実践し、振り返り、上達できます。当協会が「体系化」にこだわるのは、この違いが決定的だからです。

才能を称賛しても社会は変わりません。技術として言語化され、誰でも学べる形になり、身につけたことを証明できるようになって初めて、聴くことは社会に広がっていきます。

Our Approach

私たちがやっていること

体系化する

経験則や個人の勘に留まっていた「聴く」を、マインド・スキル・ナレッジに分解し、学習できる形に整理します。

学べるようにする

公認認定教育機関を通じて、対人職から保護者まで、誰もが受けられる講座として提供します。

証明できるようにする

習熟度に応じた4段階の資格を設け、身につけた力を社会的に証明できるようにします。

実践を続けられるようにする

資格取得を終点にせず、会員交流会や実践シェアの場を通じて、学び続ける関係をつくります。

聴くことが、特別な人の特別な才能ではなく、誰もが学べる当たり前の技術になったとき、社会は少し変わると考えています。

Next Step

「聴くが当たり前にある社会」を、一緒につくる仲間へ

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