「賛成」ではなく「評価の保留」
無条件の肯定的関心という言葉は、しばしば「何を言われても肯定すること」と受け取られます。しかし、それでは相手の判断に責任を持てなくなりますし、聴き手自身が自己一致を失います。
ここで求められているのは、賛否の判断をいったん脇に置くことです。相手の考えに同意できなくても、その人がいまそう考えているという事実は動きません。まずその事実を、評価を挟まずに受け取る。
「無条件」とは、受け取る側が条件をつけないという意味です。話の内容が正しければ聴く、筋が通っていれば聴く、自分の価値観に合えば聴く。そうした条件を外すということです。
「でも」が出るとき、何が起きているか
話を聴いていて「でも」「そうは言っても」が出てくる瞬間があります。その多くは、聴き手の中で評価が終わってしまったサインです。
評価が終わると、聴き手の関心は「相手を理解すること」から「相手の考えを修正すること」へ移ります。ここから先の質問は、理解のための質問ではなく、修正のための質問になります。
話し手はこの転換をほぼ確実に察知します。そして、話す内容を選びはじめます。反対されそうなことは言わなくなる。会話は続いているように見えて、実質的にはそこで止まっています。
「でも」が浮かんだこと自体は問題ではありません。浮かんだと気づいたうえで、口に出す前にもう一度相手の話に戻れるかどうかが分かれ目です。
条件つきの関心が、相手に残すもの
評価されながら聴かれた経験が重なると、人は「話す前に選別する」ことを覚えます。これは自分を守るための合理的な学習です。
職場であれば、上司に伝えるべき悪い情報が上がってこなくなります。家庭であれば、子どもが失敗を隠すようになります。どちらも、隠している側に問題があるのではなく、話した結果として何が返ってきたかの積み重ねです。
逆に、評価されずに受け取られる経験が重なると、人は整理のついていないことも話せるようになります。整理がついていない段階の話こそ、本当に重要な情報であることが多い。
練習の仕方
- 同意できない話を聴くとき、賛否の判断を最後まで保留してみる
- 「でも」が浮かんだら、口に出す前にもう一つ質問を挟む
- 相手の言い分を、相手が使った言葉のまま要約して確認する
- 評価したくなった内容を、あとで書き出して自分の価値観と照らし合わせる
評価を保留することは、自分の考えを捨てることではありません。判断する時点を後ろにずらすだけです。多くの場合、最後まで聴いてからのほうが、判断そのものの精度も上がります。
Next Step
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