自己一致とは何か
自己一致とは、聴き手が自分の内側で起きていることに気づいており、それを自分に対して否定していない状態を指します。
話を聴きながら、退屈を感じることがあります。焦りを感じることも、苛立ちを感じることも、逆に強く共感して涙が出そうになることもある。自己一致とは、そうした動きが起きていることを、聴き手自身が自覚できている状態です。
逆の状態を考えると分かりやすくなります。本当は焦っているのに「自分は落ち着いて聴いている」と思い込んでいる。退屈しているのに、その事実に気づかないまま丁寧な相槌を打っている。このとき、聴き手の内側と外側はずれています。
よくある誤解
自己一致は「感じたことを何でも正直に言うこと」だと誤解されることがあります。そうではありません。
気づくことと、伝えることは別の段階です。退屈を感じていると気づいたからといって、「退屈です」と言う必要はまったくありません。むしろ、多くの場面では言わないほうがよい。
重要なのは、気づいていない状態を避けることです。気づいていなければ、その感情は別の形で漏れ出します。相槌が雑になる、話を要約して先に進めようとする、時計を見る。相手はそれを敏感に受け取ります。
気づいていれば、扱えます。「いま自分は焦っている。この焦りは相手ではなく、次の予定から来ている」と分かれば、焦りを相手の話にぶつけずに済みます。
なぜ、これが最初に来るのか
自己一致が土台になるのは、残り2つの条件が「演技」に置き換えられてしまうのを防ぐからです。
受け入れているふりはできます。共感しているように見せることもできます。しかし、内側で否定しながら外側で受容の言葉を出しているとき、そのずれはほぼ必ず伝わります。人は、言葉の内容よりも、言葉と態度が一致しているかを敏感に読み取るからです。
そして、ずれが伝わった相手は、それ以上踏み込んだ話をしなくなります。「この人は本当は聞きたくないのだ」と判断されれば、そこで会話は終わります。
だから、まず自分の内側を見る。技術としての聴くは、相手を観察することからではなく、自分を観察することから始まります。
練習の仕方
自己一致は、会話の最中にいきなり身につくものではありません。会話が終わったあとの振り返りから育てていきます。
- 会話のあと、自分がどんな感情を持っていたかを一語で書き出す
- その感情が、相手から来たものか、自分の状況から来たものかを分けて考える
- 「本当は早く終わらせたかった」など、認めにくい感情ほど言葉にしてみる
- 会話中に一度だけ、自分の呼吸や姿勢に注意を向ける習慣をつくる
認めにくい感情を認めることに慣れてくると、会話の最中にも気づけるようになります。そこまで来れば、無条件の肯定的関心と共感的理解は、演技ではなく実態として働きはじめます。
Next Step
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